融資のジツワvol.4 お金が足りないときどうする?

お金を増やす経営
2021.05.24

【融資の概況】
建設会社
売上:25億円
利益:5,000万円(キャッシュフロー利益年間1億円)
借入金:15億円
年間返済額:3億円

お金が足りないとき、多くの社長はどうするか。
足りない分を借りる。それが一番、簡単で金融機関が勧める方法だから。

建設会社がこれまでに積み上げた借入金は15億円。ほとんどが返済期間5年。年間返済額は3億円に上っていた。本業の利益は5,000万円。すでに支払っている5,000万円の減価償却費を含めた実際のキャッシュフロー利益は1億円。当たり前の話だが、1億円しかないキャッシュフロー利益(現金増加額)で3億円の返済をするのでお金が足りなくなる。だからお金を借りる。その繰り返しで借入金融機関は15行、借入本数60本ほどになっていた。
こうなると、もう、どこにどれだけ借りているのか管理するだけでも負担が大きい。最後には1,000万円ずつ借りられるところから借りるという状況に陥っていた。

建設資材を扱っているため4億円の運転資金がいる。常に在庫として建設資材を持たなければならず、売掛金は入らないが支払いはしなければいけない。建設業では、着工、中間、完成と売掛金が入ってくるタイミングは翌月とは限らず、ずっとお金が足らない状態が続いていた。

預金残高が減ってくると、「最近どうですか?」と銀行がやってくる。本来なら経営者として会社の今後の展望を考える時間に、銀行との打ち合わせに時間がかかる。気づけば月の半分以上は銀行の担当者との時間に浪費されていた。

稼ぎ出すお金以上に返済をしている状態。

どう考えても無理でしょ。
銀行もわかっていた。社長もわかっていた。
でも続けるしかなかった。

あなたが経営者ならどうする?

結論:15億円の借入金を1本化した。
シンジケートローンを利用して60本を1本にまとめ、運転資金用に当座貸越5億円、証書貸付10億円(20年返済)に切り替えてもらうことができた。

返済期間が5年から20年になることで、年間返済額が3億円から5,000万円になる。キャッシュフロー利益は1億円あるので、5,000万円のキャッシュが手元に残る。毎年、2億円ずつキャッシュが減る会社から、5,000万円ずつキャッシュが増える会社になった。

そこで今日の格言。
借入はシンプルに。実力以上の返済はできない。

現在では、お金が足りないということがなくなり、
銀行の担当者に会うこともほとんどなくなった。

融資のことを中小企業の経営者が誰に相談するかというアンケートでは、第一が税理士、第二が銀行。これでは解決方法は見つからない。自分が税理士事務所で働いていたからこそだが、住宅ローンしか借りたことがない人に会社の運転資金のことや、社長のお金に対する重圧を理解することはできない。

私が財務コンサルタントとして入った一番の成果は、第三者として冷静に見ることができたこと。冷静に考えれば60本を1本化する、返済期間をせめて10年にするだけでも違うはず。
そのことに気づかせてくれる存在が中小企業の経営者には必要だ。