融資のジツワvol.7中小企業は銀行からお金を借りるもの??

お金を増やす経営
2021.06.30

【融資の概況】
不動産開発事業
2020年10月 第1回私募債発行 9,800万円
2021年4月 第2回私募債発行 9,800万円

「中小企業は銀行からお金を借りるもの」とは、これまでの世の中の常識。
急成長を続ける企業にとって、銀行からの融資だけでは成長のスピードに追いつかないというケースがある。中小企業が「直接金融」で資金を調達する時代が当たり前になりつつある。

直接金融とは、企業が株式や債券などを発行して投資家から直接、資金を調達すること。
銀行から融資を受ける「間接金融」とは異なる。

予定通り事業計画を実現するために銀行融資ではない資金調達の方法はないかと相談を受け、「社債を発行しませんか?」と提案した。
中小企業にとって不特定多数の投資家から資金を調達する「公募」はハードルが高い。
手間が少なく、低コストで発行できる「少人数私募債(しぼさい)」が考えられる。

1回の発行が1億円未満、社債引受人が49人以下の少人数私募債であれば自社で発行できる。
私募債を引き受けられるのは、社員や取引先など発行する企業の関係者であることが条件。
資金繰りを目的として発行できない、元金の一括返済が必要など、その他に細かいルールもあるけれど、償還期限や方法、利息は柔軟に設定することができるというメリットもある。

この企業の場合、5年後の一括償還、年利10%という条件で少人数私募債を発行。
9,800万円の募集に対して、あっという間に社債引受人が集まった。
6ヶ月後には、さらに9,800万円の私募債を発行し、合計1億9,600万円の資金を調達した。

実は、引受人のほとんどが社員で、ある経理担当者の場合、25口5,000万円を引き受けたという。
5年で2,500万円の利息を受け取ることができる。
誰よりも自社の将来性を身近で見てよくわかっているからこその強気の投資だ。

私募債のメリットは、手間が少なく低コストで発行できるというだけではない。
私募債を一括償還する5年後までには利益が確定し、銀行を説得するトラックレコード(過去の実績や履歴)を示すことができ、銀行からの融資も受けやすくなっているはずだ。

何より社員に会社の利益を還元できるというメリットが大きい。
給料やボーナスなどで社員に還元する場合、社会保険料などの負担がふくらみ、還元率が下がる。

そこで今日の格言。
直接金融と間接金融の違いを知ること。
中小企業にも直接金融という選択肢がある。

直接金融を通して、出世して給料やボーナスを上げる以外の選択肢を社員に示すことができる。
がんばって蓄えた財産を会社に投資することで利息という形で会社が応えてくれる。
自分の会社に投資することで仕事に対するモチベーションも高まる。
私募債が会社へのさらなる信頼につながっていく。

この私募債の発行を、社員が一番喜んだという。