決算ここがポイントvol.5グループ法人税制の活用法

お金を増やす経営
2021.07.05

2010年度の税制改正によって導入されたグループ法人税制。
うちには子会社なんてないから、小さな会社だから関係ないって思っていませんか?
グループ法人税制は会社の規模に関係なく適用されます。

本来、グループ内での取引に課税を生じさせないための制度です。
しかし、制度をよく理解することで、赤字決算を回避したり、資金繰りを改善したり、事業承継をスムーズにするなど、中小企業にとってメリットにもなります。
グループ法人税制とは、完全支配関係(100%の資本関係)にある内国法人間での取引に関する一定の規定のこと。「資産譲渡の繰延べ」「寄附金の損金不算入」「受取配当金の益金不参入」などがあります。

「受取配当金の益金不参入」の有名なケースといえばトヨタ自動車でしょう。
トヨタ自動車は2008年から2012年までの5年間、法人税を払っていなかったという報道があります。

グループ法人税制と似た制度に「外国子会社配当益金不参入制度」があります。
トヨタ自動車の場合は外国の子会社ですが、子会社からの配当金であるため課税されません。
赤字決算となることで法人税の支払いもありません。
配当金を受け取ることで赤字であっても現金が減らないため、銀行格付が下がることもありませんでした。

そこで今回のポイント

これからはグループ経営の時代。
親会社と子会社が協力して融資の受けやすい決算書を目指しましょう。

前回お話しした、40年前に100万円で購入した土地が1億円になっていたという事例もグループ法人税制を活用した事例です。

会計上、親会社では100万円としか評価されていなかった土地を、子会社に売却することで1億円という本来の評価を得ることができたというもの。繰越利益余剰金に9,900万円計上できるため、自己資本比率が高くなり、銀行格付を改善することができました。

また、子会社から1億円の現金が入るため、返済期間3年や5年の借入金を返済してキャッシュフローを改善することができました。(※詳しくは決算ここがポイントのvol.4をご覧ください)

このWebサイトで「赤字決算は1回でもだめ!」と繰り返しお伝えしてきましたが、親会社が赤字決算になる場合、子会社からの配当金で親会社の赤字を補填することもできます。

子会社から配当金を支払う際には源泉徴収が必要ですが、決算申告で親会社に源泉された分が戻ってくるため、実質、課税なく子会社の余剰資金を親会社に移転することが可能です。
ただし、2020年度の税制改正で配当額に関する規制ができたため、企業によって適用される配当額が異なります。詳しくはDr.財務スフィンクスにご相談ください。